「ゴヤ 光と影展」in 国立西洋美術館

秋といえば、「芸術の秋」ということで、上野の国立西洋美術館で開催されている『ゴヤ 光と影展』に行ってきました。平日ということもあり並ぶことなく入ることができました。

今回はヨーロッパ絵画の宝庫として名高いプラド美術館のコレクションから選ばれた油彩画、素描など72点を中心に、国立西洋美術館などが所蔵する版画50点を加えた作品が展示されていました。代表作である「着衣のマハ」が40年ぶりに来日する機会でもあります。

 

ゴヤ展の看板

 

近代絵画の創始者の1人として知られるスペインの巨匠、フランシスコ・デ・ゴヤ・イ・ルシエンテス。彼の作品の印象は、“怖さを感じるような強い作品”“綺麗で繊細な肖像画”の2つがあると認識されている方が多いのではないでしょうか。これは時代の違いによるものなんです。

 

彼の画家としての人生は、マドリードの工房でタぺストリーの下絵を描くことから始まりました。有名な画家になるためにイタリアに行きそこで開催された絵画コンクールで賞を獲得しました。戻ってきて再びタぺストリ―を描き、1789年に念願の宮廷画家になり、10年後には首席宮廷画家の地位にまでのぼりつめました。彼のタぺストリ―作品は、比較的明るい色で穏やかな雰囲気の作品です。

 

ゴヤ展の入場券&チラシ
ゴヤ展の入場券&チラシ

 

宮廷画家として彼は肖像画をメインに描いていました。彼の肖像画は写実的でありながら、人物の内面までしっかりと表現しています。彼はかなりの観察力の持ち主で人の心理を描くのが上手な画家でした。その一方で、個人的に注文を受けた絵画では、魔女などの恐ろしい雰囲気の作品も多く残しています。 

 

画家として順調に歩んでいた中、彼はある時、原因不明の病にかかり、それがきっかけで聴覚を失ってしまいました。聴覚を失ったことで画風はがらりと変化していきます。
当時のスペインの情勢も不安定で、フランスに占領され争いが起こっていました。彼の作品は暗い色が増えていったのです。人間の内面の醜さや苦悩をも表現するようになりました。これらの暗い絵画は、あまりに恐ろしく彼が生きている間には公表されませんでした。

 

また彼は版画家としても活躍しており、300点近く制作しています。白と黒の線だけで戦争を題材にした作品を多く残しています。1815年以降は1軒の家を購入し、有名な「黒い絵」のシリーズを描き始めました。1826年に宮廷画家を引退し、晩年はボルドーで過ごします。そして1900年82歳でこの世を去ったのです。

 

「木のぼりをする少年たち」
「木のぼりをする少年たち」

 

画家の人生を知ると、作品の見方も変わってきますよね。今回展示されていた作品の中で印象に残った、2作品をご紹介しようと思います。まずは「着衣のマハ」です。「裸のマハ」と対の作品として有名です。
重要なパトロンからの依頼により制作されたといわれています。この作品のタイトル(マハ)とはスペイン語で(小粋な女)を意味しているそうです。当時の貴婦人はこういう装いだったのですね。黒、金、緑、紅、茶、白色などを用いた独特な配色によってトルコ風の衣服の雰囲気や質感を表現しています。

 

また、筆の大胆な使い方により洋服の布の自然なしわの感じや陰影が表現され、この布が女性の体のラインがはっきりでてしまうほど柔らかいものだということも伝わってくるのも特徴だと思いました。

 

「着衣のマハ」
「着衣のマハ」

 

もう1作品は初期の代表作「日傘」です。この作品は当時の皇太子夫妻が食堂用のタペストリーとして依頼した作品の1つです。テーマが与えられていて、(愉快に余暇を過ごす民衆)だったそうです。女性の黄色いスカートが鮮やかでより暖かさが感じられます。また上に羽織っている服は袖のないデザインです。今でもこのデザインをベースにしたものがあることを思うと、この時代にはもうすでにあった流行は、各時代の人々により繰り返されていくのだとも感じました。

 

さらに、日傘によってできた女性の顔の陰影も自然な表現で、彼の技術のすごさを物語っていると思わされました。この作品は彼の作品で一番明るいイメージがあります。そして作品を実際に目の前で見ると楽しそうな雰囲気がより伝わってきました。

 

「日傘」
「日傘」

 

このゴヤ展では、“明るいイメージの作品”と“暗いイメージの作品”両方を堪能できる貴重な機会となっております。2012年1月29日まで開催されていますので、是非足を運ばれてみてはいかがでしょうか?