キム・ソングン画伯、彼の目で眺めた日本の青空

こんにちは!フジムラコンテンポラリーアートで韓国通訳を担当しているチェ・ヨンジンです。

 

 

もう5月になり、こちら横浜は150周年をお祝いする様々なイベントが開かれ、ちょうどお出かけにいい雰囲気です。空も綺麗な青空で、まるでキム・ソングン先生の作品を眺めているようです。皆さんはいかがお過ごしですか?

 

既に御存知の方も方もいらっしゃると思いますが、フジムラコンテンポラリーアートでは4月28日から29日まで2日間「キム・ソングン来日記念サイン会」が開催されました。勿論その時は私が先生の通訳を担当してお客様と先生、日韓のかけ橋になりました。(大袈裟でしょうか^^;)

 

先生の話を日本語に訳してお客様に伝え、お客様のご意見を韓国語に訳して先生にお伝えしながら、私は日本人と韓国人の観点両方で先生の話を聞き、先生の作品を眺めることが出来ました。
それで、今回はフジムラコンテンポラリーアートの人間ではなく、一人の人間として、一人の韓国人としてキムソングン先生の作品と彼の話を聞いた感想を、そしてキムソングン先生についての私の感想を皆さんに披露させて頂きたいと思います。このレポートで皆さんにキムソングン先生の人間性と作品を少しでも理解して頂ければと思います。

 

 

1.キム・ソングン先生との出会い
私がキム・ソングン先生と初めて出会ったのは2008年2月、真冬のソウルでした。インターネットで画歴と作品を見てから国際電話で連絡のやり取りをしただけで、お互いの間には様々な高い壁が存在しました。異邦人に対しての排他的な態度までではないですが、「韓国の数えきれないアーティストの中で私に連絡して、日本からわざわざ韓国に来てまで私に会おうとする理由が何だろう」という不安を読むことができました。

 

先生のアトリエに到着して玄関のベルを押し、玄関が開くのを待っている間の時間はたった1分でしたが、私には1時間のように長く感じられました。
「どんな性格の人だろう。」
「電話ではかなりいい感じだったけど、実際感じ悪い人で、話がうまく通じなかったらどうしよう。」
等の不安と緊張を持ちながら私は玄関が開くのを待ちました。

 

玄関が開き、日本のスタッフとキムソングン先生、先生の奥様の間で簡単な自己紹介と挨拶があった後、先生のアトリエを回ることができました。
アトリエを見ながら、そして先生とスタッフとの色々な話を通訳しながら私が感じたのは、「穏やかな方」でした。凄く庶民的なイメージの方で、有名アーティストなら持っているはずの優越感も感じられませんでした。自身の作品についてのプライドは隠さなかったけど、そのプライドが上からの目線に変わることはありませんでした。

 

初対面で緊張している先生
初対面で緊張している先生

 

スタッフの質問に対して答えて頂く際も、細かいところまで分かりやすく説明して頂き、初対面にもかかわらずあまり緊張感のない、楽しいとも言えるほどの時間を過ごしました。

 

大きいサイズのキャンバス、いったい何号サイズだろう
大きいサイズのキャンバス、いったい何号サイズだろう

 

作品制作中の先生
作品制作中の先生

 

 

2.思いやり
私はキムソングン先生の話を日本語に訳する通訳です。通訳の仕事をするだけでキムソングン先生の性格まで分かるのかと思う方がいらっしゃるかもしれませんが、逆に通訳だからこそキムソング先生の話を1から10まで聞き取ることができるのです。

 

私が先生と日本のスタッフの間の通訳になって働きながら先生の話を聞いて思ったのは「思いやりのある方」です。
色々なところで通訳の仕事をしましたが、通訳に「話が長くなりそうですので、途中で切ります。段階に分けて通訳して下さいね」とおっしゃって下さる方はあまりいません。
キムソングン先生はいつも話が長くなりそうなときは上記の話を先におっしゃるか、あるいは説明の途中に「まずはここまで。続きは後でつなぎます。」とおっしゃいますので、その内容がとても感性的で通訳しづらい場合でもスムーズに話を訳せます。

 

難しい作品説明の通訳も楽しく出来ます
難しい作品説明の通訳も楽しく出来ます

 

サインカードのメッセージはすべてが違います
サインカードのメッセージはすべてが違います

 

そして私がびっくりするほど感動したのは、先生がサイン会でお客様のサインカードに書かれるメッセージの内容が全て違うことです。
キムソングン先生のサイン会は普段デパート等の場所で芸人さんがするサイン会とは違って、お客様から作品の質問をしたり、軽い会話もする、まるで塾の勉強会のようなスタイルです。先生はお客様一人一人の話を全部聞き、そのお客様の立場に合わせて感謝の気持ち、応援のメッセージなど、全て違うメッセージを書くのです。

 

 

3.オープンマインド
最近はインターネットの発達、海外旅行の一般化などの影響で外国・外国人が昔より身近な存在になってきました。新聞、ニュースにも必ず国際ニュースが比重を持っていて、アメリカの株の動きが翌日には東証1部株の動きに影響を及ぼす時代です。
しかし、私達一人一人にとって、外国はあまり自分とは関係のない存在と思われ、日本人同士も理解しようとしない個人主義が蔓延しているのも昨今の現実です。

 

 

私はキムソングン先生の作品をお買いになったあるお客様から作品についての感想が書いてあるお手紙を頂き、それを翻訳して先生にお伝えしたことがあります。そのお手紙を読んだ先生の返事は「私達は言語・文化は違いますが、文章と絵画という違うジャンルの芸術を通してお互いの考えを理解する事ができたと思います。」でした。

芸術に文化、言語、人種を超える力があるというのを私は初めて実感しました。私が自分の頭と舌を使って日本語をしゃべる時、先生は筆を使って先生の理念を静かに日本にまで届けていたのです。

 

 

4.The Life With the Reason of Existence (存在の目的がある人生)
雲、麦藁帽子、椅子、ベンチ、白樺の木など、先生の作品には色々な素材が登場します。特記すべきことは、この素材の中で存在の理由がないのは一つもないということです。お客様から素材についての質問が出ると、先生の口からはすぐ答えが出てきます。理由なく適当に描き入れた素材は一つもありません。先生は自身の将来希望をこのように語られました。

 

「将来希望がない人間はだれ一人もいないと思います。将来希望はその人の存在の理由になる為です。私は小学生のころから画家を目指して、今はその夢を実現しました。今私の将来希望は筆を手に持ってキャンバスに絵を描きながら死ぬことです。」

 

先生の人生を語れるものは、お金でも名誉でもなく、絵具と筆だけです
先生の人生を語れるものは、お金でも名誉でもなく、絵具と筆だけです

 

皆さんはキム・ソングン先生の作品を観ながらどのようなイメージを感じられますか?
私は先生の作品を観て穏やかな雰囲気、あたたかい温もりを感じました。なぜでしょう。先生の作品には赤、オレンジなどの温もりを感じさせる色はほとんどありません。むしろ冷たさ、寒さを感じさせる青がメインです。

 

なのに私が先生の作品で温もりを感じるのは、先生の人格、人間性が作品の中に流れているからではないでしょうか。皆さんもキム・ソングン先生の作品から温もりを見つけ、心が温まる素敵な経験を是非感じて頂けたらと思います。