みなさん、こんにちは!フジムラコンテンポラリーアートのチェ・ヨンジンです。 いつも様々な美術系の資料を作っている私ですが、ギャラリーとは別のオフィスで働いているため、本物の作品を拝見させて頂く機会がなかなかありません。なので、作品に関しましては、パソコンで資料制作作業をしながら漠然と、「この作品の色使いは凄いなぁ~」「へぇ、かわった技法を使っているんだ」ぐらいしか感じられなかったのも事実です。
実際、パソコンの画面で見る作品の画像と本物の作品は、“肌に感じられてくる響き”が全く違います。いくら素晴らしい作品でも、パソコンの画像で見るときは数えきれないデジタルビットの集合体に過ぎません。しかし、本物を自らの目で鑑賞するときは、まるで筆の跡一つ一つに刻まれているアーティストの情熱が私に話をかけるような気がして仕方ありません。
既にご存知の方もいらっしゃると思いますが、スペインの巨匠フェルナンド・コーマ画伯のトップシークレットパーティが9月26日から27日まで2日間、当ギャラリーで開かれました。なんと、このパーティでは作品を鑑賞するだけではなく、アーティスト本人と目を合わせながらお話しすることも出来たのです!!
私はこのパーティに運営補助、通訳補助として参加させて頂きました。先生がオフィスで休憩をとる間は、私もオフィスでパソコンの作業をしたため、さりげなくお話しする機会が多かったのです。そのおかげで先生と会話し、彼の話を近くで実に多く聞き取ることが出来ました。
先生は自分の名前、故郷、技法などのあらゆるところに妥協しないこだわりを持っていました。先生がオフィスで休憩をとる間、私は偶然オフィスのパソコンを使って彼の名前入りの資料を作っていました。小さい紙一枚の資料でしたが、先生はその中に入る自分の名前の色、フォント、配置まで意見を言いながらより良い資料が出来上がるように手伝ってくださいました。
それだけではありません。お客様との会話の途中スペインの話題が出た際、彼はスペインという国名より故郷の地名のカタルーニャを強調しながら、「私をスペイン人ではなく、カタルーニャ人と呼んで下さい」とおっしゃったことがあります。私も韓国から日本に来て生活している外国人ですが、コーマ先生の愛郷心とプライドには「C’est Magnifique!(素晴らしい!)」としかいいようがありません。
ここまで私の話を読んだ皆さんの中には、コーマ先生のことを「頭の固~いアーティスト」として考えている方がいらっしゃるかもしれませんが、それは違います。固くてカリスマ溢れる初印象とは違って、やはり彼は明るくて情熱的なラテン文化のカタルーニャ人でした。
先生の話を通訳すると、どこが本当で、どこが冗談かよく分からなくなることがあります。しかしそれは彼が軽いからではありません。自身の情熱が含まれている作品を眺めながら、その時間を相手と一緒に楽しむ。そうです。彼はお客様に自分の作品を説明し、理解させようとしたのではなく、その時間をお客様と楽しんだのではないでしょうか。また、コーマ先生は自分の知らないことは躊躇せずに質問する、好奇心旺盛でオープンマインドな方でもあります。
初日のパーティが終わった後、私はコーマ先生をお泊りのホテルまで見送りさせて頂きました。横浜元町の綺麗な夜景をカメラで撮っていた先生が夜景がきれいなのにカメラにはよく写らないとおっしゃいました。私がそれを聞いて先生のデジカメの設定を確認させて頂いたところ、カメラの手ブレ機能がオフに、iso感度が200(昼間に写真を撮るときの数値)に設定されていたことが分かりました。私が先生に、“暗い時の写真の撮り方について”簡単に説明しましたら、先生は頻りに「ありがとう」とおっしゃいながら喜んで下さいました。
翌朝、オフィスでの挨拶と同時に、私は先生からカメラに関する質問をたくさん尋ねられました。まさか私が美術の巨匠に、しかも英語で、カメラについて説明する日が来るとは思いもよりませんでした。正直、満足な説明になったかも疑問です。
今回のフェルナンド・コーマ トップシークレットパーティはお客様方々には勿論、我々スタッフにも記憶に残る大切な想い出になったと思います。「アートは理解しようとするのではなく、そのままで受け入れて楽しむべきだ」とおっしゃった先生の話が今も頭から離れません。
これからもフェルナンド・コーマの情熱・迫力あふれるアートをお楽しみ下さい!