ルドン展2025「オディロン・ルドン−光の夢、影の輝き」をパナソニック汐留美術館で鑑賞してきました

本日のブログは、スタッフIが美術展の鑑賞レポートをお届けします。

パナソニック汐留美術館で開催の「PARALLEL MODE:オディロン・ルドン−光の夢、影の輝き」の看板

東京汐留にあるパナソニック汐留美術館で、世界屈指の岐阜県美術館のコレクションを中心に、国内外の名品を加えた約110点の作品でルドンの豊穣な画業をたどる「PARALLEL MODE:オディロン・ルドン−光の夢、影の輝き」が、2025年4月12日(土)〜6月22日(日)の日程で開催されていたので鑑賞してきました。

パナソニック汐留美術館で開催の「PARALLEL MODE:オディロン・ルドン−光の夢、影の輝き」の看板

本展は、岐阜県美術館が世界に誇るルドン・コレクションと国内外から集めた優品 約110点によって、オディロン・ルドンの豊穣な画業の全容に迫ります。

パナソニック汐留美術館で開催の「PARALLEL MODE:オディロン・ルドン−光の夢、影の輝き」のパンフレット
中央下《窓》

ルドンの晩年の主要な画題の一つである「ステンドグラス」を描いた《窓》(1906年頃)が本展で初公開。さらに、ルドン流の進化論といわれる石版画集「起源」が9点そろって展示されます。

伝統と革新の狭間で独自の表現を確立した近代美術の巨匠、ルドンの軌跡をぜひご体感ください。

■館内で写真撮影はできる?
本展では、館内の写真撮影はできません(最後のフォトスポットのみ撮影可能です)。

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目次

オディロン・ルドン−光の夢、影の輝き(パナソニック汐留美術館)鑑賞レポート

パナソニック汐留美術館の外観
パナソニック汐留美術館の外観

新型コロナウイルス真っ盛り、2022年4月の「イスラエル博物館所蔵ピカソ― ひらめきの原点 ―」ぶりのパナソニック汐留美術館。

パナソニック汐留美術館で開催の「PARALLEL MODE:オディロン・ルドン−光の夢、影の輝き」の看板

今回は、新橋駅から迷わずたどり着けました。

ほとんどNO知識で、ルドンWORLDに飛び込みます!

オディロン・ルドンとは?

オディロン・ルドン
オディロン・ルドン
Guy et Mockel (Pierre Mockel), Public domain, via Wikimedia Commons

フランス南西部のボルドーに生まれ、故郷とパリで絵画と版画の基礎を学んだオディロン・ルドン(1840-1916)。

初期には、神秘的で幻想的なイメージを木炭画や石版画で表現し、1890年代以降はパステルや油彩に画材を転換。

花、神話、宗教、人物など多様な主題を通じ、光と影の織りなす独自の表現で、伝統を超えた新たな芸術の可能性に挑戦しました。その作品群は、時代や地域を超えて今なお多くの人々を魅了しています。

ルドン展の会場構成

オディロン・ルドン ―光の夢、影の輝きの会場案内図
  • プロローグ:日本とルドン
  • 第1章 画家の誕生と形成 1840-1872
  • 第2章 忍び寄る世紀末:発表の場の広がり、別れと出会い 1885-1895
  • 第3章 Modernist / Contemporarian・ルドン 新時代の幕開け 1896-1916

本展では、神秘的な幻想世界を木炭画や石版画で表現した“黒の時代”から、パステルや油彩で鮮やかに表現した“光の時代”への移行、自身の内面と表現方法を変化させていった興味深い軌跡を追うことができます。

木炭画やリトグラフ(石版画)

右《ダブル・プロフィル》

木炭とペンで描かれた《ダブル・プロフィル》。

光を吸収しながら光を際立たせる表現が可能なのは、木炭だからなのだろうか。
「同一人物の光と影・二面性を表現しているのかも…」とか想像しながら長いこと鑑賞してました。

影の人物を手前に描くからこそ光の効果がよりフォーカスされていて、本展の副題「影の輝き」を象徴する作品です。

作中の左下に描かれた「OD. R」のサインもかっこいい。

ジャン=レオン・ジェローム
ジャン=レオン・ジェローム Nadar, Public domain, via Wikimedia Commons

ルドンは若い頃、パリに出てジャン=レオン・ジェロームの下で学んでいます。

「あまり馴染めなかった」と数ヶ月で離れていますが、のちにサロンなどに出展する際、自身を「ジェロームの弟子」と署名していたそうです。師弟関係は短期間と言えど大きな影響を受けていたのかもしれません。「ジェロームの弟子」と名乗れば通りが良くなると考えたのか…というのは穿った見方が過ぎるかな(-_-;)。

その後、故郷に戻って版画家ロドルフ・ブレスダンやアンリ・ファンタン=ラトゥールからリトグラフ(石版画)の指導を受け、ルドンは転写式リトグラフを採用していきます。

パナソニック汐留美術館で開催の「PARALLEL MODE:オディロン・ルドン−光の夢、影の輝き」のパンフレット
中央《夢のなかで VIII 幻視》1879年 リトグラフ
岐阜県美術館所蔵

1879年、初の石版画集「夢のなかで」を刊行。
本展には「夢のなかで」とともに、ルドン流の進化論といわれる石版画集「起源」も9点そろって展示されています。

第一印象は、「黒」「暗い」「奇怪」に尽きる。
でも、それぞれの作品を見ると、日常的な構図の中に奇怪な描写は1点しかなく、モチーフすべてが奇妙・神秘的な絵というわけではない。

そう思っていたら、ルドンは若かりし頃、バルビゾン派として知られるカミーユ・コローに「空想的なイメージの隣に直接取材した事物を置くことで、創造の世界が現実的になる」とアドバイスを受けていたとあり、

「なるほど、そうか!」と、すごく得心がいきました。

ルドンが版画を教わったロドルフ・ブレスダンの《善きサマリア人》が参考作品として紹介されていましが、

ロドルフ・ブレスダン《善きサマリア人》1861年
ロドルフ・ブレスダン《善きサマリア人》
Rodolphe Bresdin, Public domain, via Wikimedia Commons

このリトグラフがすごかった!
時代も技法も異なりますが、ルネサンス期の画家アルブレヒト・デューラーの銅版画《メランコリア I》と《犀》を見たときの衝撃に近い(当時は「版画=彫刻刀で掘る木版画」という知識しかなかったのもありますけれど…)。

濃淡の奥行き、(日常の中の空想ではなく)空想の中にあるリアル=ラクダが神秘性を粒立てます。

作品として展示されていたのではなくて、ただ参考として紹介されていただけですが、とても印象的でした。

油彩画

パナソニック汐留美術館で開催の「PARALLEL MODE:オディロン・ルドン−光の夢、影の輝き」のチラシ
チラシに使用されている《神話的な対話》

本展のメイン作品でもある《神話的な対話》。

概略的に描かれた円柱が、バラ色に彩られ雲が浮かぶ青空を堂々と切り取っています。

「オディロン・ルドン=異形が登場する黒色の幻想世界」という印象しかなかった私のルドン像を木っ端みじんに打ち砕くに十分な光の表現。暗い幻想世界が前フリかのような落差です。

パナソニック汐留美術館で開催の「PARALLEL MODE:オディロン・ルドン−光の夢、影の輝き」の《窓》
オディロン・ルドン《窓》1906年頃 油彩・画布
岐阜県美術館所蔵

本展で最も印象に残ったのは、ルドンの晩年における主要な画題の一つである「ステンドグラス」を描いた油彩画《窓》。

《神話的な対話》に比べると大人しめな色彩。
だけど、よりたくさんの光の粒が、窓の中に色の束・光の束として凝縮されているよう。

色が主張していないのに多彩な色を感じられ、彩ある“外の世界”を《窓》が切り取る。窓のこちら側は黒の世界なのだろうか。

写真が良くないですが、実際の額装作品は歴史を感じる優雅さ満載の素晴らしい作品でした。

パナソニック汐留美術館のグッズ売り場
グッズ売り場

本展は大規模展示ではないため、グッズもあまり種類がなく…《窓》のポストカードだけでも欲しかったけれど…残念。

会場内は、フォトスポットを除いて写真撮影NG

パナソニック汐留美術館で開催の「PARALLEL MODE:オディロン・ルドン−光の夢、影の輝き」の看板
フォトスポット

出口にあるフォトスポット以外は、写真撮影不可となっています。

この記事を書いた人:スタッフI

オディロン・ルドン−光の夢、影の輝き(パナソニック汐留美術館)開催概要

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