空の上の竜~その2~

フジムラコンテンポラリーアートの詩人「MIYUKI」さん。
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竜のおかげで男の子は、友達とケンカしてもうまく仲直りすることができるようになったのです。竜はそんなことは知らない様子で、今日も空の上で仲間たちと遊んでいます。雲の下ではひどい雨が降っている時でも、雲の上はきれいに晴れわたっているので、雨にぬれることはほとんどありません。

 

でも、この竜は雨にぬれるのが大好きなのでした。ひどく嵐が吹き荒れているある夏の夜、いつものように雲の下に下りて行き、雨にぬれながら空を飛んでいました。嵐の中なので雨だけでなく、風もかなり強いですが、竜の体は風に吹き飛ばされることはありません。
吹き飛ばされるどころか、嵐の中を吹き荒れる強い風に乗って雨の中を飛ぶのが好きなのでした。
人間たちに姿を見られる心配もないので、高い空の上だけでなく、地上に近い低い所を飛んだりして、空の上を自由に飛び回っていました。

 

階段のような雲。

 

そんな竜の目にあるものが飛び込んで来ました。それが何か気になった竜は地上の近くまで下りて行ってみました。近づいてみると、丘の斜面の大きな木の下にあの男の子が倒れていたのです。男の子はあの丘の上で空をながめているうちに、いつのまにか眠ってしまい、夜になって降り出した雨で目を覚ましたのです。

 

周りがすっかり暗くなっている中、急いで帰ろうとして雨でぬれた斜面で足を滑らせて動けなくなっていたのでした。なんとか雨宿りしようと近くの大きな木の下までようやく地面をはうようにして行ったものの、段々強くなる雨に途方にくれているうちにまた眠ってしまっていたのでした。
竜は男の子の冷えた体を自分の体で優しく包んで、しばらく温めていました。いくら木の陰にいるとはいえ、風も強いため、男の子の体はすっかり雨にぬれてしまっていたのです。そして、雨風が少し弱まってくると、しっぽで優しく包んで自分の体に乗せて、男の子が落ちないように十分に気をつけながら、低空飛行で男の子の家の前までゆっくり飛んで行きました。

 

 

男の子の家の前に着くと、竜は男の子を雨に濡れないひさしの下にやさしく下ろし、しっぽの先で家のドアを軽くトントンとたたいて飛び去って行ったのでした。男の子の家では夜になっても帰ってこない男の子を心配して大騒ぎでした。探そうにもどこを探していいかわからず、しかも外は雨風の強い嵐になったため探しに出ていくこともできず困りはてていたのでした。
そんなとき誰かがドアをトントンとたたいたのです。
ドアを開けた男の子の両親は家の前に倒れている男の子を見つけ、びっくりしたものの、とにかく見つかってよかったと一安心したのでした。雨にぬれてぐったりしてはいましたが、男の子は確かに生きています。

 

急いで暖かい家の中に入れると、ぬれた服を着替えさせてベッドへ運んだのでした。体も温まり目を覚ました男の子は足を痛がりました。どうやらぬれた斜面で足を滑らせたときに足をケガしたようなのです。両親は男の子をさっそく病院に連れて行き、そのまましばらく入院することになりました。
その日の夜から冷たい雨にぬれていたのもあり、高い熱が続きました。男の子は病院のベッドに寝ている間夢を見ました。いつものように竜の背中に乗って、昼間の明るい高い空を自由に飛んでいる夢ももちろん見ました。
でもほかの場面の夢も見たのです。それは、昼間ではなく雨の降る夜に、竜のやさしく温かい背中に乗って、低い所をゆっくりと飛んで自分の家に向かっているちょっと不思議な、それでいて心地よい夢でした。竜がなぜ男の子の家を知っていたのか男の子はちょっと不思議に思いましたが、それほど気にしませんでした。

 

男の子はあの嵐の夜、誰が家の前まで運んでくれたのか覚えていませんでしたし、どうやって家の前まで帰って来たのかも覚えていないのでした。ですが、誰かが家の前まで運んでくれたから男の子は助かったのです。男の子は病院のベッドで見たあの夢のことは誰にも話していませんが、きっとあの夢は本当にあったことで、竜が自分を助けてくれたのだろうと、一人そっと信じていました。
熱も下がり、足のケガもよくなってすっかり元気になった男の子は、友達とケンカした訳でもないのに、一人丘の上にやって来て空をのんびりながめていました。

 

雲の間に紛れて、竜は飛んでいますよ。
右下に、大きな顔を覗かせています。

 

そして、空に竜の顔の形に見える雲を見つけると、雲に向かって「ありがとう」と叫んだのでした。すると、一瞬ですが竜の目が少し笑ったように見えたのです。
その声は竜に届いていたのでしょうか。もちろんちゃんと届いていますよ。届いていたからこそ、竜は少しだけ笑ったのでした。

 

男の子は大きくなるにつれ、本物の竜の姿を見ることは少なくなっていきました。でも竜はいなくなった訳ではありません。私たちには姿が見えていないだけで、今でも竜たちは空の上を自由に飛びまわっているのです。
男の子は竜の姿を見ることがなくなってからも、何かあるとあの丘の上にやって来ては、寝ころがって空をのんびりながめているのです。そこで、いろんな形に見える雲をながめては、あれは~に見える、これは~みたいだと一人想像をふくらませていたのです。

その中にはもちろん竜の顔の形をした雲もあれば、竜の体のように細く長い雲もあります。そして子供の頃と同じように、今日の竜は形がぼんやりしていてなんだか微妙な感じだなとか、今日は目や口もはっきりしていてなんだか笑っているみたいだなどと思いながら、空をながめているのでした。そんな中でも細く長い雲を見つけると「あ!竜が空を飛んでいる」と思って、つい目が行ってしまうのでした。

 

空を横切る龍の姿は、こんな姿でしょうね。

 

皆さんも日々の生活に追われる毎日でしょうが、たまにはのんびりと空を見上げてごらんなさい。きっと皆さんの知らない世界が空の上には広がっているかもしれませんよ。いろんな形に見える雲を見つけたとき、皆さんにはそれが何の形に見えるのでしょうか。そして、そこにはどんな世界が広がっているのでしょうか。

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